家族を支えながら大学へ通う、ミャンマー少女の積極的な人生選択。
ミャンマー、ヤンゴンでは実はやることが盛りだくさん。打ち損ねた腸チフスの予防接種に、ミャンマーからインドへの陸路国境越えの手続き、さらにインドビザの申請などなどなど。できればどこかのゲストハウスに拠点を置いて、ヤンゴンライフを少しでも楽に過ごしていきたいわけです。
そんな時、もうこれなしでは旅ができなくなるほどお世話になっているホテルブッキングサービス、Agoda(アゴダ)に良さげなゲストハウスがヒットしました。
ここ、20th Street Hostel
子供だらけのゲストハウス!?
ここだと決めて、ゲストハウスに到着した瞬間驚かされるのが、
従業員、、、皆んな子供!?
この、やたら低年齢ゲストハウスに、今回のヤンゴン滞在全て(初めの2日を除く)を捧げることにしたのです。
住んでみるとなかなか楽しいところで、日に日に従業員の皆んなとも仲良くなっていくわけです。
次第にこの低年齢の謎も解けていく。
潤p:なんで皆んなこんなに若いの!?
従業員A:ほとんどがヤンゴンの外から、仕事と学校に来てる子ばっかりなんですよ。だから、普段はここで働いて、ある期間には学校へ通って。
この不思議な低年齢ゲストハウスは、職業難のミャンマー地方から、学校に行きたいがお金がないという子供たちの受け皿として存在していたのです。
年齢も13歳~23歳ほどまで。外国人旅行者の英語対応を年長者が担当して、それ以外の掃除から洗濯までを若年なガキンチョ達がせっせと働いているのです。
毎朝一斉に大掃除をしている姿はなんだが微笑ましい。
そして、面白いのが、彼らの不思議な共同生活。なんだか合宿に来ている子供のように楽しげに暮らしている。
皆んな気のいい奴らで、終盤らへんはゲストハウスから一歩も出ずに、終始皆んなでトランプ漬けなんて日々を楽しんでました。
*皆んなでトランプで遊ぶ
一番のデキ女、メッテとの出会い。
ミャンマーの若者にはどうフィールドワークするかなぁと考えていたところ、彼らに惚れ込んでしまった潤pは、よし、ヤンゴンのメインはこのゲストハウスで働く彼らにしようと決めました。
さて、その中で1人とりわけ仕事熱心に、英語を達者に、何よりどんな旅行者にもとても親切に接してくれる子がおりました。
行きたい場所を言えば、知らない場所でも即座に調べてくれて、バスの番号はしっかりミャンマー語で書いてくれるわ、しまいには今日は雨降るから傘持った?ってお天気お姉さんにもなってくれる素敵な仕事のできる彼女です。
名前:メッテ
年齢:21歳
職業:大学4年生、20th Street Hostelスタッフ(受付)
一年に45日間だけの大学生。
メンビアという、ミャンマーのヤンゴン北に位置する地方出身であるメッテは、1年前ほどにこのゲストハウスにやってきました。
もともとこのゲストハウスで働いていた友人の紹介がきっかけでした。
彼女はここで働きながら同時に大学生でもあります。
ミャンマーでは毎日大学へ通う一般的なクラスの他に、それが叶わない生徒のために設けられた、一年に45日間だけ通うというコースが存在します。
メッテ:11月に大学が始まるから、そこになったら仕事はお休みして、大学の寮に泊まるんです。大学に行くのが待ち遠しい!
大学では英語を専攻する彼女。大学に通っている時の写真を嬉しそうに見せてくれて、確かにその写真の中には、制服であるミャンマー伝統衣装ロンジーを着た美しい彼女がいます。
*制服姿を見せてくれる彼女
しかし同時に、一年に45日間のみという授業期間に、満足いく教育が受けられていないとも漏らします。それでも、彼女には、大学に通うだけではなく、働かなければならない理由があります。
家族を支える、仕事と大学。
メッテ:毎月、働いた分の80ドル分を家族に送っています。父の収入が1ヶ月で200ドルで、家族の生活費と、私の学費、そしてこれから大学に進学する妹の学費には不十分なので、私も働く必要があるんです。
1ヶ月にたったの2日の休みだけで、彼女はとても真面目に働いています。
*受付で働くメッテ
メッテの大学の学費は一年で400ドル。軍人であるという父親の収入では、娘2人を進学させ、同時に生活費もまかなっていくのには困難があります。
しかし、1ヶ月110ドルの給料であるメッテにとって、80ドルを家族に送るというのは非常に大きな額となります。
住居と白米が保障されたこのゲストハウスにありながらも、残りの30ドルのみで暮らす、非常に倹約した日々を送っていることがわかります。
働きながら学ぶ、彼女の人生選択。
潤p:両親は、大学進学について、何か言っていた?
メッテ:本当は、結婚して早く子供を作って欲しいと言っていました。でも、私はそれでも勉強をしたかったので、働きながら学ぶことを選びました。
将来の夢は小学校の先生であるというメッテ。
理由は、1ヶ月250ドルという、その高い給料です。
両親からのプレッシャーを避けて、学歴を選んだ彼女。それに伴うよりよい職業を得られることを知った彼女なりの、1つの賢い人生選択が現れているように感じます。
メッテ:両親は、軍人である父親の影響で、政府機関の仕事について欲しいといっています。それと、日本の技能実習生にもなろうと思っていたこともありました!でも、そのためには400ドルを払わないといけなかったから、やめました。
大学が始まる前、一年に一度休みを取り、実家に帰ることができるという彼女。実家が恋しいとこぼします。その休みには、実家の家事を手伝うんだそう。
まとめ。
まだ大都会とは言い難いヤンゴンですが、それでも地方との格差は日々広がっていきます。彼女を含めたここで働くスタッフの多くは、働きながら、一年の特定の期間に勉強に出ていきます。
前回ヤンゴン大学に行った時の大学生とは、同じ大学生でありながら全く環境の異なる彼ら。どこの国にもある話ですが、収入格差は同時に教育格差にも直結しています。
10代から20歳前後の若者たちにとって、決して楽な生活とは言い難い環境ですが、しかしそれでも積極的に学力をつけていく彼らは、これからのヤンゴン、ミャンマーを牽引していく存在のように思えます。
厳しい環境の中で、よりよい方向への積極的な人生選択に、豊かな国日本では考えられないような芯の強さを感じます。
何より、彼らの集団生活が、潤pにはとても愛おしく思えました。