ウザくて、可愛い。これだから憎めない、この愛くるしいインドの民よ。
インドにきて、1ヶ月が過ぎようとしている。
思い返せば飽くことなく続くインド野郎どもとの問答も、次第に慣れてくるものである。
小賢しい野郎はそこらじゅうにいる。
それのカモになる日本人も、腐る程いる。
しかし、1ヶ月も奴らと拳を交しあってきた潤pは、次第にその戦略やクセのようなものを見抜けるようにすらなってきた。
もっといえば、次第に、あの野郎どものことが、愛らしくすらなってくるわけである。
これだから、奴らは憎めない。
インドの野郎どもは、強烈なまでに人に関心がありすぎる人種として有名である。
興味津々で、どこからともなく話しかけてきやがる。
直ぐに何人だと聞いてくれば、
迷ってもないのに道を教えようとしてきたり、
いきなり、人生とはと語り出してきたり。
彼らはどうしても迷える外人を放っておけないらしい。
一番の問題であるのが、彼らに道を尋ねた時だ。
「ここに行きたいんですけど。。。」
「んんーーーっと、それは、こっちの方角だよ!」
てくてくてく、あれ?違くね?
「あのー、これってこの辺にありますか?」
「それは反対だよ!」
まじか、、、てくてくてく?え?マジでここなの?
「これってどこにあるんですか?」
「なんでこっちに歩いてきてるんだ、これは反対だよ!」
どっちなんだーーーーーーーーー!!!!!!!!
別に奴らに悪気はない。ただ、ただ、知らなくても、どうしても道を教えたい。それだけなんだ。
これだから、奴らは憎めない。
インドの野郎どもと、最も日常的に拳を交える場といえば、露天商ではないか。
何を買うにも定価というものが存在しないインドでは、その都度店主と交渉して、値が決まるというシステムが存在している。
店主が折れるか、自分が折れるか、一貴一賎の攻防は、手に汗握るインドの日常として有名である。
当然ながら、インドの商人にまともな輩などいやしない。
最終的に商人側が折れて、自分がお得な買い物ができたと勝ち誇って、実際にはそれでも本当の値段の倍以上で買わされていたり、奴らは小作な手であれやこれやと旅行者から金を巻き上げている。
特にムカつくのが、店にやってきて、モノを物色する。
あるモノを先にいたインド人は100ルピーで買う。
よし、値段がわかったと、同じものを買おうとすると、奴らは平気で、
「は?500ルピーだよ」
5倍である。
誰もがわかる、5倍になれば当然おかしいという超自然原理的な方程式を、根本から覆す提案を、最も平然と、恐ろしいまでの真顔で言ってくるもんだから、逆に圧倒されてしまう自分もいる。
しかしここで負ける潤pではない。
「おい!さっきの客はなんなんだ?」
と聞くと、
「は?皆んな500ルピーだぞ」
と平気でシラを切る。
しかしだ、
「わかった。それなら今日は買わない。」
と、あえて引き下がるフェイントをかけると、
「おいおいおい!わかったわかった!ごめんなさい!買ってください」
となるから、
これだから、奴らは憎めない。
インド人の野郎どもは、珍しいものが大好きだ。特にカメラを持っていると、やってきて、写真を撮ってくれと言ってくる。
ピースサインをする人、まんべんの笑みを浮かべる人様々だが、ほとんどの人が渾身のカッコつけフェイスをかまし、思いっきりドヤってくるから面白い。
しかも、撮った写真を、送ってくれと言う人がほとんどいないことも、やつらのカメラに写りたい欲求の根源的な理由を、より難解なものにする。
「おい!お前!」
「はい?」
「カメラでオレを撮ってくれ!」
「いいっすよ!」
ドヤ顔
パシャ
「どれどれ(ニタニタ)いいな。かっこいい。よし、じゃあな!」
一体何故なんだ、そんなにオレのメモリーに刻まれたいのか。
それだけで満足なのか!?
これだから、奴らは憎めない。
ある時、街を歩いていると、人だかりを見つけた。
何か何かと近づいて行くと、人だかりの先には、2人の男が口論している。
なんとも、車をぶつけたとかぶつけていないとかの、喧嘩中だ。
つまりこの群衆たちは、喧嘩の実物客というわけだ。
実にアホな光景である。
しかし、わらけてしまうのは、実物されている2人の男、かなりヒートアップしているのだが、実は巧みにオーディエンスを扇動していることである。
「おい皆んな!どう考えても悪いのはこいつだよな!?!?」
「まてまてまて!!絶対にお前だ!なぁ皆んな!」
「よし、じゃぁ、いいか、どっちが悪いか、悪いと思う方に、皆んな拍手してくれ!!」
オーディエンスを盛り上げる敏腕MCばりのトーク力を発揮して、もはやコンビの漫才師ではあるまいかとすら思わせる2人と、それに熱狂する暇な群衆たち。
これだから、奴らは憎めない。
そんなこんなで、これ以外にも様々、インドにいるとインド人が、
なんて単純で、なんて純粋で、なんてアホで、なんてムカついて、なんて愛くるしい人々なのかと痛感させられる。
そういえば、この前道で会った物乞いが、こんな絡みを展開してきた。
「兄さん!金くれよ!」
「やだよ!」
「わかった!じゃぁ、クレジットカードでいいや!」
これだから、奴らは憎めないのである。