密告/拉致/同化政策 - 失われていく「香港」中国政府の同化政策から、その土地に生きる人が語る、揺れ動く香港の今。
香港っていったいどんな場所なのか。
・中国の1つ?
・なんか、めっちゃ裕福なところなんでしょ?
・ビジネスの都市みたいな?
香港の返還なんかをリアルタイムで意識してこなかった若年層の僕のような人間は、
香港というものに対してとりわけ「関心」を寄せず、
「中国の一部なんだろ〜」ぐらいにしか理解できていないような気がします。
僕もその全てを知ったわけじゃないけれど、
今回少しだけ、香港の揺れ動く今を知ることができました。
揺れ動く香港 - 失われていくアイデンティティ
今、香港から、その文化や価値観を含めた生活が、失われかけています。
香港はそもそも、
歴史的に中国とは全く異なる道を歩んできたところです。
イギリスの長い占領時代を経て、中国に返還。
その後、特別行政区となり、現在に至ります。
香港についてあまり知らない人からすると、
「香港って中国の1つの都市だろ?」って思われがちですが、
軍隊を除く行政や法律は全て、
香港は独自の体制によって成り立っています。
潤p:何人って聞かれたら、なんて答えるの?
A:香港人にその質問はすっごく難しいよ。確かに中国人なわけだし、世界的に考えたら中国人だってことになると思うよ。でも、私は香港人だって答えるね。
1997年に中国に返還されるまで、
イギリス占領下の元で香港は独自の文化を築いてきました。
そもそも、香港人の先祖の一部は、
中国が共産党政権に変わった当時、
その体勢に反対し流れてきた人たちだと言います。
中国本土と異なる政治的趣向を根底に根付かせているのは、
その歴史からわかります。
B:香港の今は、とても大変ですよ。この前、中国政府に関する書籍を書いた作者達が、中国以外の国で突然全員消息を絶ったんです。これって普通だと思いますか?
先ほど行政に関して香港は独自のものを採用していると言いましたが、
事実、香港のトップに立てる人は、
共産党の上層部エリートと言われています。
そのため、実質的に香港の政府は中国政府の傘下にあり、
その実行権力は限られるものと考えられます。
中国にある、密告制度。
世界には、密告制度を設けている国があります。
密告した人が報酬を得ることができるこの制度でのもと、
香港でも何回か、こんな場面に出くわしました。
C:中国共産党が、、、、、、、(周りを見渡し沈黙)
ごめん、あまり大きい声で外では言えないんです。
広東語?中国語の方言なの?
この香港に訪れて、実際に香港人と対面で出会うまで、
潤pは香港人とは中国人のことで、
その違いは東京と大阪のようなものだろうと思っていました。
しかし、それを完全に否定したのは、言語です。
ゲストハウスに向かう途中、エレベーターの中で、1人の女性に会いました。
潤p:ゲストハウスに行くんですか?
D:はい!同じゲストハウスですか?
潤p:そうですよ!中国の方ですか?
D:はい。北京からきました。
そして、一緒にゲストハウスの受付へ向かうと彼女は突然、フロントの女性に
Can you speak Mandarin?
東京の人が、大阪でこんなこと、あります!?
一般的に中国語と言われているのはマンダリンと言われる言語です。
台湾を含む中国ほぼ全土で話される最もメジャーな中国語です。
一方ここ香港で使われるのは、広東語。
当初広東語は中国語の1つの方言だと思っていましたが、
これは完全に別言語です。
だって、中国人は「ありがとう」を「シェイシェイ」といいますが、
香港の人は「ありがとう」を「ドジェ」というんです。
彼らに聞いても、広東語話者とマンダリン話者とでは
コミュニケーションはほぼ不可能だといいます。
失われていく、広東語。
言語の消失は、文化や国の消滅だと聞きました。
広東語を話す中国本土の地域である広州も、
他地域からの入植者によって、
現在ではその比率がマンダリンと広東語で半々ほどに。
近い将来マンダリンが優勢になるとみられています。
香港人も小学校時代に英語よりも先にマンダリンが必修となるため、
現在の若い世代は、マンダリンをほぼ話すことができるといいます。
D:最近では、どんどん広東語の肩身が狭くなってきました。同化政策って聞いたことありますか?今、中国政府は、香港に対してそうゆうことをしてますよ。
今まで香港の土地出会った場所も、
中国に返還されるケースも以前起こりました。
中国本土から、たくさんの中国人が流入し、
香港の環境は日に日に変化しています。
E:中国人は、香港が厄介ものなんですね。もともと共産党に反対の気質がありますし、香港人は中国共産党にとって扱いづらい存在なんです。だから、私たちは、これから消えていく存在なのかもしれません。近い将来、中国に併合されることは、まちがいないと思いますよ。
チベットへの中国共産党の参入による焼身自殺や、
ウイグル人の虐殺、内モンゴルの領土問題。
中国政府の同化政策は有名ですが、
香港も、目立たないながらに、そんな国々の1つです。
立ち上がった若者たち
Umbrella Revolution(傘の革命)をどれだけの日本人が知っているでしょうか。
自分たちの文化が壊されていく、自由に見えて自由がない、
そんな状況に反対する、若者を中心とする人々が、
これらの運動を展開しました。
F:友達にも、参加してた人は多いですよ。もう運動は終わっちゃったけど、そのせいで仕事に就けなくなるってことも、確かにあったね。
香港に対して何の事前知識もなければ、
昔の潤pのように、
「ちょっと裕福で中国の1つのビジネス中心地」
くらいにしか香港を思っていないかもしれません。
しかし、実際に現地に生きている人の声を聞いてみると、
華々しい生活の裏に見える、
日本では決して考えられない政治的事情が生活を作り上げています。
日本もかつて琉球やアイヌの人たちを、
知らないうちに「日本人」にしてしまったように、
今この場所でも、
アイデンティティと国、ナショナリティなどが激しく揺れ動いています。