EU離脱の今、イギリス人大学生の本音。何故イリギスはEUを離脱するのか。
旅中、たまたま出会ったイギリス人大学生(Aさん)と深く話せる機会がありまして、ミャンマーシリーズの途中ですが、ちょいと今回はそちらの話をさせて頂きます。
旅は面白いもんで、訪れた現地のことだけが知れるものでもありません。旅行者として海外に来ている自分同様、その土地には世界中から人々がやってきます。
同じゲストハウスに泊まっていたり、たまたま同じツアーで一緒になったり、観光地で意気投合したり、いろんな出会い方はありますが、そのイギリス人大学生Aさんもそんな1人でした。
政治的な内容なので、具体的な人物像は避けますが、今世界中を賑わすイギリスに生まれ、生き、学ぶその人が、何を思っているのか。本音を聞くことができました。
旅行中に起きた大ニュース。
EUの離脱を表明し、世界から注目されるイギリス。この世界的大ニュースを知ったのは、Aさん自身も海外にいる時のことでした。
A:このニュースを目にしたのは海外に来てからです。とても驚きましたが、ただ、この大変な状況は、今に始まったことじゃない。
何でイギリス国民はEU離脱を望んだの?
EU離脱のデメリットは知っての通り数知れず。自分で自分の首を絞めるような選択にも報じられるこの選択の裏に、イギリス国民の若者は一体どんなぶっちゃけを持っているんでしょうか。
A:イギリスに来たら、特にロンドン。とても驚くと思う。純粋なイギリス人に会う方が、外国人と会うことより珍しいんです。今のイギリスにはあまりに移民が増えすぎて、町中に外国人が溢れかえっています。
難民、移民を受け入れることが義務付けられるEUで、近年問題とされる難民、移民問題。近頃の中東情勢のもと、多くの中東系難民がイギリスに溢れているといいます。
特に、EUの中でも社会保障制度が優良なイギリスでは、難民でも水準の高い生活が送れるため、EU随一の移民人気国となったのです。
潤p:イギリスの就職状況はどうなってるんですか?
A:今イギリスの若者に起きてるのは、深刻な職不足。増えすぎた難民と移民の影響で、たくさんの若者が大学を卒業しても職にあぶれてしまっています。
経済の疲弊による職不足や失業問題だけでなく、移民と難民による職不足という新たな問題にイギリスは直面しています。
複雑な気持ち。
A:今あなたと話しているのと同じように、異文化の人と触れ合うのは大好きですし、イギリスが移民によってインターナショナルな国になっていくことはとても素晴らしいことだと思う。しかし、それでも、普通の、決して裕福でもないイギリス人が、世界から流れ込んでくる人たちに、自分たちの税金で暮らしを保障しなければいけないこと、それにはどうしても限界があります。
ただにせよ経済が好調とは言い難いイギリスで、職業難にも苦しむ国民が、難民に対して全面サポートをしていくことは容易ではありません。当然反発が生まれます。
A:難民や移民に対して、出て行けとは言いたくない。でも、出て行ってもらわなければ、自分たちの生活が危ぶまれてしまう。とても複雑な問題です。
Aさんの口調も、どんどんと感情的になっていきます。
離脱の瞬間に、イギリス国内での移民に対する悲しい事件も幾つか耳にしました。世界平和とは誰でも口に出して言える文句であって、実際にその人が生命の危機に脅かされた時、状況は逆転してしまいます。
A:もちろん、EU離脱はどうかしてると思う。暗い未来は目に見えてるし、それでも、イギリス人の気持ちも理解してほしいです。
それらの理由で、イギリス国民はEUからの離脱を投票で決めました。
失われていくイギリス文化。募る将来への不安。
さらに、大学で文化人類学を学ぶAさんはもう1つ強く懸念することがあるといいます。
A:今、イギリスの文化はどこへ行ってしまったかわかりません。あまりに国際的になりすぎたイギリスでは、イギリス文化と言われるものが日に日に消えていくように思います。
さらに、自分の将来をこう見通しました。
潤p:Aさん自身は、自分の将来をどう捉えているんですか?
A:怖い。ものすごく不安でいっぱいです。もし万が一、今後イギリスにこれ以上移民が増え続けるようだったら、国を出ようと思ってさえいます。実はここに来たのも、海外で仕事をすることを考える1つのきっかけにとも思っています。
もちろん、個人の意見であることは大前提ですが、今のイギリスを生きるイギリス人の大学生は、こんな心情のもと、日々を生きています。
EU離脱は本当に間違った選択だと言い切れるのか。
この話題が取りざたされ始めると、多くの知識人、他国の政治家たちも離脱はすべきでないと述べました。 イギリスの経済や将来を現実的に見通して、それは非常に正しい指摘と言えます。
ただ、離脱を1つの側面で見るだけでなく、文化やそこに生きる人々の感情レベルにまで掘り下げて見てみると、必ずしも間違った選択だったとは言い切れないものだとAさんの話を聞いて強く思わされます。
何より、一番困惑して、どちらの選択が正しいのかすらわかっていないのは、当のイギリス国民。そして、おそらく最も被害を被るのは、これからの社会に生きる、若者たちです。
日本はどうなの?
幸運か不運か、日本は移民や難民に対しては非常に閉鎖的な政策を取っています。未だにほとんど永住する外国人を見る機会も少ないです。しかし、それは世界的には非常にレアケースであることを、再認識する必要があるかもしれません。
古来から、島国であり、国民性も非常に保守的と言われるこの日本に、EUと同じ移民政策はそもそも現実的ではありません。しかしそれでも、世界はそのわがままを聞いてくれない時代にあるのかもしれません。
高齢化に伴う労働力不足を移民で補う議論は、むしろ有力な方向に進んでいるように感じますし、
今だから距離的に流れが向かってきていないだけですが、イギリスのEU離脱を受けてEU他国も移民や難民に対しては閉鎖的な政策を選択した場合、いつ大量の中東系難民がやってきてもおかしくはありません
むしろ、それが当然の方向と言っていいかもしれません。
そんな時、イギリスで今起きていること、そしてこの大学生が感じていることは、未来の日本に十分に起こり得る。今、イギリスの状況をしっかりと把握して、そこから学ぶ姿勢も、必要だと思ってしまうのです。
そして何より、もう海の向こうに関心を寄せない生き方から、関心を寄せなければいけない世の中に否応なしに投げ込まれていつつある。
旅をしながら毎日テロにビクビクして、場合によっては行きたい国も断念して、そんな日々を送る潤pはそんなことを思うのです。