潤pの、就活やめて、世界一周することにしちゃった。

2016/4/15から始まった、世界中の「働く」を探るプロジェクト! 日本の「就活」と「働く」ことに息苦しさを感じた「現役就活生」潤pが、世界の同世代と出会い、就活事情と労働環境、そのライフコースを取材、配信し、 帰国後に電子書籍化するプロジェクト。

【メキシコの大学生は、皆んなメキシコが嫌いなの!?】超えられないメキシコ人種格差の壁と実はシンプルなその理由。

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近年のメキシコ人若者層の大きな動向といえば、海外へ移住する人が増えていること。

言い方を変えれば、国を捨てる若者が非常に多いことだと思います。

 

今、メキシコ人の移住先人気国はカナダでしょう。

世間を賑わせたトランプのメキシコに対する厳しい政策の裏で、カナダ政府はメキシコ人にビザなしで入国することを認めました。

 

カナダ政府の安価な労働力の需要という政治的内情があったとは思いますが、当時メキシコ人の間では大きな話題となっていました。

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A:ちょっと高学歴の若者は、最近皆んな海外に出て行ってしまうらしい。政府が腐りきっていて、賃金も低く、将来性のないこの国にいてもどうしようもないって考える若者が多いんだと思います。

そう語るのは、メキシコ在住日本人のAさん。

 

潤p:大学にいけない若者はどうなるんですか?

A:大学とかに行けない人は、そもそも外の世界のことを知らないから、路上や電車の中で物を売って稼いだり、スリになったり、これまで通りの生活をするだけだと思います。

 

つい数日前まで過ごしてきたヨーロッパ、北米では見なかった、電車内での物売りの光景がやけに新鮮だとちょうど思っていたところでした。

 

発展途上、じゃないメキシコ?

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これまで東南アジアからアフリカも含め、多くの「発展途上国」を旅してきたわけですが、そのどの国も爆発的な成長力とエネルギーに満ち溢れておりました。

そしてそこに生きる若者は、自国で働いていき、結果的に自国のマーケットに還元していこうとする人が多かったように思います。

 

しかし、同じ第三世界に括られるここメキシコでは、なんだかそのエネルギーがあまり感じられないのです。

 

出会った若者が口々に言うのは、

「早く海外にでて行きたいの」

「メキシコの政府は最悪」

「この国では生きて生きたくない」

何だか自国に対して、ものすごくネガティブなものばかり。

 

いったいこの理由は何なのか。

それが少しづつ見えてきます。

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白人と原住民の、人種格差。

メキシコシティの街を歩いていると、地区の空気感がエリアによって全く異なります。

高層ビルが立ち並び、スターバックスがそこらじゅうにあるようなところには白人が多く、タコス屋が軒を連ねて賑やかに人が行き交いするような場所には、原住民系の人が多いように思います。

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メキシコには、大きく分けて2つの人種が。

スペイン植民地時代に渡ってきたヨーロッパ系の人々と、元々の定住者である原住民系。顔をみれば一目瞭然。

 

ベネズエラ人のairbnbホスト(以下記事)は、こんな話をしてくれました。

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ホスト:メキシコ、ボリビア、ペルーなんかの国は、これまであまり多人種と混じり合ってこなかったんだ。だから、メキシコ人の顔は特徴的で、未だにアステカやマヤからの血統を純粋に受け継いでいる人が多いんだ。でも、僕らみたいなベネズエラとか、コロンビア、ブラジルなんかの国では、原住民と白人、その他の世界中の人種がミックスにミックスをどんどんしていって、決まった「ベネズエラ人の顔」みたいなのがないんだよ。だからベネズエラ人ってめちゃめちゃオープンなのかもね(笑)。

 

実際そのホストは父親が中国人、母親がスペインのバスク人と、めちゃめちゃインターナショナル。

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*原住民系の人が営み、集まる屋台。

 

メキシコに色濃く残るこの人種差は、経済格差として顕著に現れています。

大学に進学するような若者のほとんどが白人系の血を受け継ぐ人たちで、

露店で働く人々のほとんどが原住民系です。

 

街中やテレビの広告の登場人物は白人が基本で、

地下鉄は原住民系の人々で溢れています。

 

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メキシカンプロレス、ルチャ・リブレは面白いです。

お客さんやレスラーは、原住民系の人ばかり。

 

「自由な戦い」という意味のルチャ・リブレの起源は、征服者スペイン人に見立てた素顔のレスラーと、古代アステカ文明を象徴するマスクマンとを戦わせたことに由来するそう。

支配階級へのアンチテーゼから生まれた、被支配階級の文化です。

まさに、人種格差を如実に表したような大衆娯楽。

 

前回の記事で1人の原住民系の若者が語ったように、メキシコの人種格差には、根深いものがあるようです。

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カトリックの国メキシコ。

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メキシコの郊外の大学に通う日本人留学生Bさんは、こんなことを語ります。

B:周りのメキシコ人の大学生を見ていると、頑張ってキャリアを築いていこうって考えてる人は少なくて、生まれたままに生きていくって人が多いと思います。その明るさは、それ以外の世界がない、ここに満足するしかないという気持ちから来ているんじゃないかと思います。

 

キリスト教カトリックが深く根付いているメキシコでは、世襲制など、古くからの社会の枠組みが未だに影響力を持って存在しています。

 

B:日本人が人を殺さなかったり、いいことをしたりするのは、仏教徒じゃなくても、元々のベースのマインドにその発想が染み付いてるからだと思うんです。それと同じことで、メキシコでは、カトリックの教えが人々の価値観に深く染み付いているんだと思います。

 

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カトリックが優位なラテンアメリカでは、キリスト教の教えが慣習や人格形成においてとても強い影響を及ぼしているそう。

 

プロテスタントとの違いを考えるとわかりやすいと思うのですが、一般的にカトリックは伝統思考で、個人の努力よりも神に祈ることで救いを求め、厳しい戒律の中に生きています。

そのために、今の自分の環境をありのままに受け入れている人が多いのかもしれません。

 

プロテスタントの国、アメリカとは対照的な理由がなんとなく想像つきます。

男女の格差がはっきりとしていて、そのためのレディーファーストが徹底されている点も、こういった理由が関係しているのかもしれません。

 

メキシコは、スペイン? 

メキシコの街は、スペインの街。

B:スペインの征服方法は、相手の文化をことごとく破壊して、格差を作り、絶対服従させるようなものだったんですよ。今もその名残があって、メキシコ人のメンタリティに影響しているんだと思います。同じ植民地政策でも、イギリスやアメリカ、日本の植民地はそれぞれ違うんだと思います。

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街並みから、人々の思考まで、今日という日まで未だにスペイン征服時代の色を濃く残しているメキシコ。

スペイン文化を基本に、そこにわずかながら古代からのアステカ、マヤの思想を残している、そんな国だと思います。

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古代文明のパフォーマンス。

 

実はシンプルなメキシコ社会。 

メキシコは一見とても不思議な国です。

何で未だに格差が深くて、

何で少し高学歴な若者は国外移住を望んで、

何で貧しい人はそれを受け入れて生きているのか。

 

そういった疑問は、上で述べてきた1つ1つの社会のピースを理解していくと、少しづつ理解できてきます。

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そして実はもしかしたらとてもシンプルな社会なのかもしれません。

単純に低所得者層はそのままの人生を歩むしかなく、高所得者層はより恵まれた豊かな暮らしを求める。

その間は交わることも、超えることもなく、

スペイン支配の名残が未だに色濃く残るこの国の社会構造は、そう簡単には変わらないのだと悟ります。

 

ただ、それでも人々は、ゆっくりと自分の世界で、自分なりのペースで全てを受け入れながら生きていく、そんな社会だと感じました。

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