アメリカ就活事情【絶望は希望の始まりだった!】人種・格差を超えて、それでも挑戦する、アメリカの大学生。
学歴社会アメリカでは、ピンからキリまで大学のレベルも様々。
今回は、ニューヨークから州をまたいでニュージャージー州へ、といってもマンハッタンから川を越えて島向かい。
ニュージャージーシティ大学へ行ってきました。
世界に誇るハーバード大学にも行きましたが、ここニュージャージーシティ大学はレベルの高いとされる大学ではありません。
しかし、アメリカのような「最頂点」から「最底辺」までがまじまじと存在する国では、いろんな角度から若者の考え方を覗いてみたいと思うのです。
*ニュージャージーシティ大学校内
縁あって、1つの授業(少人数ゼミ)にお邪魔することができました。
学生の雰囲気は、とにかく積極的。
授業中にスマフォをいじっていたり、生徒同士が私語で盛り上がっている姿は日本でも見慣れた大学生の授業風景ですが、なによりクラスの全員が当たり前のように発言している光景に驚きました。
臆せず質問を教員、生徒同士にぶつけたり、自分の意見で反論したり、いつの間にか生徒主導のディベート大会のようになっています。
とても物静かそうな学生すらも、必ず一言は進んで発言していたことには、なんだかカルチャーの違いを感じます。
*ニュージャージーシティ大学校内学食
コネクションで生き残る、アメリカ就活。
そんなクラスの2人の学生から、授業後に話を聞くことができました。
国際関係を専攻する18歳の女子学生Aさん(白人系)と、ビジネス・マーケティングを学ぶ19歳の男子学生Bさん(ヒスパニック系)です。
潤p:アメリカでの就活はどんな感じ?
A:アメリカの職探しでもっとも必要になるのはコネクションだね。信頼できる人をハイヤーする、すごく簡単で合理的な採用方法だと思うよ。
学生たちを基本的にはフラットな状態で選別する、日本の新卒一括採用とは対照的な就活方法、コネクション。
能力経験主義のアメリカのような国では、決まった採用プロセス自体が存在していないのです。
*学食で食べたランチ
潤p:正直、大学のレベルってところは、採用に関係してくるの? 例えばハーバード大学みたいに。
A:ハーバード大学とかの有名な大学の学生は、それ自体ですでにコネクションを持っているんだ。大学名だけで信頼を勝ち取れているの。就活にはコネクションが必要なんだけど、そのコネクションを得るには、前提として信頼をいかにして勝ち取るかということになるの。
そんな彼女は、社会人を目前に控えた今、コネクション作りに励んでいると言います。
グローバル企業への就職を希望している彼女は、そこで働く友人に、打診してみようと考えているそう。
学歴では一歩遅れをとる彼ら。
そんな中で生き残る手段として、相手の信頼を勝ち取るコネクションが鍵になるようです。
↓参考に、ボストンの若者が語った、職歴をつけるという戦い方も↓
戦略的に、生き残る。
男子学生Bさんの場合は、一風変わったライフコースを歩んできたそう。
B:僕は2つの高校行ったんだ。はじめは一般的な高校に行っていたんだけど、アートの世界で生きて行きたくて、アート系の高校に行ったんだ。今でも将来の夢は写真家かアートの仕事につきたいと思っているんだ。
潤p:今は、この大学でビジネスを学んでいるんだ?
B:僕はギャンブルはしないんだ。高校時代の友達は、もうアーティストになっている友達も多いけど、今大学で経理やビジネスの知識をつけておけば、将来独り立ちした時に失敗するリスクが減るからね。
学歴の低いとされる大学に通う学生たちの口から語られる、戦略的な将来プランに驚かされます。
そこには、経済的なハンデを抱えているからこその、現実的なキャリアプランの描き方が現れているようにも思います。
*ニュージャージーシティ大学校内学食
学歴格差は、経済格差?
アメリカでは日本と違い、一般的に私立大学のほうが公立大学(州立大学)よりもレベルが高いケースが多いです。
それは両者大学の目的の違いに起因します。
私立大学が専門性の高く質の高い教育を、一部の優秀な学生に施しエリートを育成することを目的としているのに対し、
公立大学は州内のできるだけ多くの若者に大学教育を与えることを目的としています。
そのため、平均的に、私立大学と公立大学とでは、その年間の授業料に2~3倍の開きがあります。
大学の授業料が高いことで有名なアメリカ。
ハーバード大学のような一流大学になると、年間の授業料はなんと500万円ほど!!(レートにより変動)
Aさんは、自分の家庭環境を振り返ります。
A:私の高校は、160人ぐらい生徒がいたんだけど、そこから大学に進学したのは2~3人ぐらいだったんだよね。他はそのまま仕事をしたり、家庭を持ったり。私は本当は私立大学に行きたかったんだけど、金銭的に行くことができなかったの。でも、自分の子供には私立大学に行かせてあげたいから、早く安定した家庭を築きたい。
2人とも実は奨学金をもらい、無料で大学に通っている。
もちろん返済不要の奨学金ですが、誰でもがもらえるものではありません。
アメリカは、学歴と家庭の経済状況が密接に関わっている国。
もちろん、飛び抜けて優秀な学生は、授業料など一切かからずにエリート私立大学に行くこともできますが、一般的な学生は、家庭の経済状況が悪ければ、高度な教育は受けられず、そのあとの優位な就活も約束されません。
ニュージャージーシティ大学で教える教員の方は、こう語ります。
教員:ニュージャージーシティ大学の学生の多くは、裕福でない家庭の学生が多いです。そのため、夜は仕事をしなければならず、ほとんど睡眠も取れないまま授業にくる学生もいます。そんな日が続けば、当然ドロップアウトしてしまう学生も増えるんです。
データによると、この大学の人種構成は、非白人の生徒が6割以上を閉めています。
永遠の競争社会アメリカの、絶望と希望。
しかし、それでも不思議なのが、経済状況や人種などの変えられないハンデを抱えながらも、2人のような希望を見出して挑戦する学生もいるという事実。
B:ニューヨークには、そこらじゅうにチャンスがあるんだ。ニューヨークで生きるには、というかアメリカで生きるには、努力が一番なによりも大切。本当に自分にあう仕事を見つけられるのは、それだけチャレンジした人なんだ。
この際限のない競争の社会が、一方では深い絶望を、また一方では夢を見させるチャンスを生み出しているように思います。
常に競争にさらされているからこそ、そこにチャンスを見出すことができる。
絶望と希望とは、表裏一体のような関係なのかもしれません。
最後に、Aさんの言葉が印象的だったので紹介して締めたいと思います。
A:アメリカにはSoundがなくなってきていると思うの。日本やイギリスには、Soundがあって、アメリカにはPop Musicしかないの。つまり、大量消費の競争社会にあって、物をいかに販売するか、ビジネス的なこと自体が文化になってしまっていて、その他のことが忘れ去られてしまっている。それがアメリカだと思うの。