バンガロール、スタートアップに失敗したインド人若手起業家の、日本では想像できないスピード感。
散々以前の記事までで、バンガロールの爆発的なスタートアップの勢いを押してまして、そんなところを中心にフィールドワークを展開しているこの頃ですが、何としても実際にスタートアップに関わっている人にその話を聞いてみたい。
ということで、今回その本人に会ってきました。
ただ、単にスタートアップに関わるインド人でないのが今回の面白いところ。
一度スタートアップを立ち上げて、失敗した経験を持つインド人のKisiorに、今回話を聞くことができたのです。
彼との出会いもスタートアップ。
彼と潤pを引き合わせてくれたのもこれまたスタートアップ。
おそらくスタートアップとしては世界一の成功を収めているんじゃないかと思うairbnbのweb上で出会いました。
バンガロールでの民泊を探していると、1人の男の物件がヒットします。
そのプロフィールによると、最近スタートアップの会社を立ち上げたそうで。。。?
なんちゅうこっちゃ、早速連絡を取り、アポイントを取り付けます。
ちなみに、彼の家は滞在することはできませんでしたが、こうして泊まらなくても、SNSのような使用方法もできるのがairbnbのいいとこです。
名前:Kisior
年齢:29歳
職業:求職中
宿泊はしませんでしたが、会うことになった場所は、彼のairbnbの部屋。
普段個人の事務所のようにつかっていて、大きな平ベットが置かれた、簡素な部屋です。
インド人といっても、人それぞれ色んな人がおりますが、Kishorは、普段表情を大きく変えない、落ち着いた雰囲気のある人でした。
しかし、日本にはまだスタートアップカルチャーが薄く、未だに一度会社にはいったらずっとそこにい続けるという終身雇用システムも色濃く残っていることを話すと、目を丸くして驚いたところに、この人にしっかり話を聞いてみようと決めたのです。
どんなスタートアップ、やってたの?
Kishorは約1年前に、自分の立ち上げたスタートアップの会社をたたみました。
立ち上げていたのは、フードデリバリーサービスのスタートアップ企業。
App1つで食べ物を注文して家まで届けてくれるというサービスは、バンガロールでは各社がこぞって競い合っている現状です。
有名なのはこんな企業。
潤p:なんで、フードデリバリーのスタートアップだったんですか?
K:まず料理が好きで、色んな人に食事を振る舞うのが好きだったんです。それをAppと合わせて運営したら、面白いかと思って、始めました。
部屋の奥にあるキッチンに、たくさん並んだ料理機材が、彼がいかに料理好きであることを物語っています。
フードデリバリーの会社を始めた理由はいたってシンプル。
自分の特技である料理を、お店を持たずに簡単に人々に届けたい、そんな方法が見つけられたのがスタートアップという方法だったのです。
会社の運営自体は、本当に自分で料理を作り、デリバリーをするスタッフを雇い、サイトを立ち上げてそこから注文を受けるという方法を取っていました。
新しいスタイルの、レストランです。
Kishorのマーケティング。
立ち上げてからの始めの滑り出しは、すべてSNSでの広報。
instgram、Facebookから様々なツールを用いて、友人の幅から顧客を広げていきました。
しかし、最終的に、会社はたたむことになります。
潤p:一番の問題点はなんだったと思いますか?
K:食べ物という、見た目が一番大切な業界で、買いたくなる商品の見せ方が上手くできなかったことが問題だったと思います。サイトの作り方などもそうですが、やはり、小さくても実際のお店があるかどうかは、大きなポイントになると思います。
やはり、料理を作る人間として、お店を持ちたいという気持ちが、この仕事を通してさらに大きくなってきたようです。
事実、バンガロールで展開するフードデリバリーサービスのスタートアップ企業でも、実際のお店と提携し、注文とデリバリーの部分を請け負う、B to B to Cの企業がほとんどです。
自分で料理を作ることありきでスタートするやり方は、Kishor独自のものであったと思えます。
彼は旅に出た。
実は、会社をたたんだ後、Kishorは旅に出ます。
もともと、世界1周を行おうとしましたが、ビザが思いの外多くの国から降りず、長くインド国内の旅行を行いました。
ちなみに、世界の卵料理をネットで配信するという世界1周企画をもともと企画していたほど、ユニークなアイディアマンである彼です。
インド旅行で国内を見て回った彼は、バンガロールに戻り、新たな生活を始めました。
Kishorのライフヒストリー
現在求職中という書き方をしましたが、実際彼はフリーランスのライターの仕事を単発で請け負ってもいます。
K:もともとは、エンジニアになろうと、理系の学部にいたんです。でも結局自分に合わずに中退して、結局は英文の学部に入りなおしました(笑)。理系学部の教授をしている父親からは、エンジニアになることを反対されたんですけど、昔はエンジニアになることが一番いいと思ってましたね。父親が正しかった(笑)。
卒業後は、コールセンターの夜勤でお金を稼ぎながら、機械類のレビューや使い方なんかを書く、テクニカルライターとして働き始め、起業。その後、失敗と旅を経験し、現在もライターとしての仕事をフリーで続けています。
失敗しても戦い続けるスタートアップ魂。
潤p:これからはどうしていくんですか?
K:もちろんまた会社を起こしますよ。でも今はいいパートナーを探しています。
今回の大きな反省点は、いいパートナーと巡り合えなかったことと、自分ですべてを回そうとしてしまったことだと語る彼。
これからは、お金を貯めつつ、信頼できるパートナーと仲間を探していくといいます。
彼と話して感じるのは、会社が失敗したことを微塵も気にしていないということ。
今回はいい学びであったととらえ、その清々しいまでの気持ちの切り替えに、このバンガロールというビジネスシティの特徴が伺えます。
毎年何百社もの企業が生まれるこのバンガロールでは、その生存競争も激しいです。
逆に、だからこそ、とりあえず起業してみて、自分の経験として肥やしにするという若手起業家も多く、能動的なキャリア構築に、僕が今まで見てきた地域とは明らかに違う世界観を感じます。
潤p:次の企業予定は、何年後ぐらいなんですか?
K:今年中にはやるつもりだよ!
バンガロールの若者の、ビジネスのスピード感は、すさまじいと感じずにはいられません。