タンザニアの若者が始めた、本当のスタートアップ。@ダルエスラームに生きる若手起業家たち。
これまでのフィールドワークで明らかになった、タンザニア人の働くスタイル。
・大卒でも半数が就職できないという現状。
・厳しい環境下で生き残るために、複数の仕事を掛け持ちするスタイルが一般的。
・学歴の効力が少ないサバイバル社会。
実際にそのような環境下で、タンザニア・ダルエスサラームに生きる若者達はどのようにして生きているのか。
今回は2人の大学生にその驚くべき実態を聞いてきました。
子供の頃からビジネスマン - ムサファリ
名前:ムサファリ
年齢:25歳
職業:小売業
タンザニア、いや東アフリカ最高学府とされるダルエスサラーム大学を数ヶ月前に卒業した彼、ムサファリ。
特定の企業には就職せず、現在個人の小売業で生計を立てている、つまりは、タンザニアの若手起業家です。
ムサファリとの出会いは共通の知人の紹介から。
潤pの調査にうってつけの人ということで、話を聞きに行ったのです。
SNS必須!若手ビジネスマン。
彼の主な仕事は、アパレル業。
一般的な洋服の販売から、顧客から細かい注文を受け、その通りに彼がデザインし、発注、完成品の配送までこなす、オーダーメイドも行なっています。
インスタグラムなどのSNSを主な流通経路として、現在は知人の紹介などでも仕事を受けているそう。
彼のインスタグラムやFBを見せてもらうと、そのウォールにはたくさんの彼がデザインした洋服が挙げられています。
会ったその日も、発注など、仕事の電話がひっきりなしにかかってくる、まさにフリーのビジネスマン。
会社に就職しないの? え? なんで就職するの?
潤p:会社に入ろうとは思わなかったの?
ムサ:え?なんで?こっちの方がいいでしょ?時間に拘束されないし。この仕事は自由に時間の調整がつくし、働いた分だけお金が入る。疲れてたら働かなければいい話で、とても自由なんだ。
卒業後は、一時期就職を考えてトライしていた時期もあったそうですが、結局学生時代から行ってきたこのアパレルの仕事を継続して生きていくことにしたといいます。
タンザニアには学生起業家が多く、不安定な経済状況から、特定の会社に就職するよりもむしろムサファリのように自分で起業するほうが手っ取り早かったりするようなのです。
実際に、ムサファリの友達とも数人に会いましたが、すでに自分で起業している、現在フリーとして様々な仕事を受けている、これから起業予定、などという若者がとても多かったことに驚かされました。
1人で生きていく理由。
ムサ:父親が早くに亡くなったんだ。だから、小さい頃からずっと自分で生きていくためにお金を稼いできたんだ。小さい頃は、人から買ったものを別の人に売る転売みたいなことから始めて、今までその延長で生きてるよ。
アパレル以外の仕事もやっているという彼の現在の働くスタイルは、幼少期から培われてきた経験の上に成り立ってるもののようです。
潤p:ダルエスサラーム大学っていう、こんな優秀な大学に入ったのには何か理由があるの?
ムサ:ただ単純に、一番の高学歴が欲しくてダルエスサラーム大学に来たんだ。かなり勉強したし、それだけいい大学に行きたかったから。多分それは、小さい頃からのハングリー精神にあるんだと思う。
おそらくムサフィリ自身の経験で、最優秀大学に行くことがこの厳しい社会と現状の中で生き抜く、最善の方法として映ったのでしょうか。
ムサ:今民泊に泊まってるんだっけ?
潤p:うん、そうよー。
ムサ:あれって、ここの家でもできるかな?
彼はタンザニアの1人のビジネスマンとして、新しいビジネスチャンスを常にハングリーに探している。
生きていくために「働く」- テディ
名前:テディ
年齢:23歳
職業:カレッジ休学中・小売業
高校卒業後、カレッジに進学するも休学し、現在自分自身で小売業を行いながら生計を立てているのは、23歳の彼女、テディです。
テディ:カレッジで勉強していたんだけど、途中で授業料が払えなくなっちゃって、休学しなくちゃいけなくなったんです。そこで、授業料を払うためにアイスクリーム屋さんでバイトを始めて、同時に自分のビジネスもスタートしたんです。
公務員であったの彼女の父親は、酒を飲んでは暴れる日々。
テディの授業料は支払わず、飲酒代に使う彼に呆れ、若くしてすでに自分1人で生きていくしかないと悟っていたといいます。
ビジネスチャンスは道端に。
彼女のビジネスは何でも屋に近いもの。
特にシーツを中心に問屋から買い付けて、知り合いに売る仲買いの仕事をしています。
テディ:元々このビジネスの発想は、ダルエスサラームのオフィス街で見つけたんです。あそこで働く人たちはいつも忙しくて、外に買い物に行く時間もないんです。そこで、いつも昼休みの時間になるといろんな物売りの人がオフィスの前まで物を売りに来る。そうか!ならその忙しいオフィスワーカーが欲しいものを探して、自分が代わりに買いに行こうって、そうして始めたんです。
自分の周りのオフィスワーカーにどんなものが必要か市場調査を行って、ポスターで宣伝も。現在は主に、インスタグラムとFBによる注文を受けているといいます。
これからも、生きていくために。
テディ:少しずつお金も増えたので、今は新しく食料品の販売を始めようかなと思ってます。ついこの前まで服の販売もしてたんだけど、あれはあんまりうまくいかなかったから、まだ色々研究中です。
彼女も1人の社会人として、常に新しいチャンスを探している。
何よりオシャレで高級感のある洋服を着ているテディ。始めに会ったときは、裕福などこかのお嬢さんなのかなとすら思いました。
しかし、見た目からは想像できなバックグランド。彼女も、自分で自分の人生、スタイルを掴もうと懸命に生きている、1人のタンザニア人の若者なのです。
「後進国」だから生まれた、フィジカルスタートアップ。
タンザニアの、これらの若者と出会っていると、僕の脳裏をよぎるのは、インド・バンガロールで出会った若手スタートアップ起業家たちと非常に似ているということ。
事実、ムサファリやテディが行っているビジネスは、スタートアップビジネスと根本的にとても通ずるものがあると思うのです。
確かに、スマフォアプリがあるわけではないですし、「これから世界を視野に!」みたいなものとは違いますが、彼女彼らの感性で、今のその土地に必要なもの嗅ぎ分けて、少人数または個人でインパクトを与えていくという点で非常に共通しています。
タンザニアでは未だスマートフォンの普及率が少なく、そもそも全世界的なスタートアップのビジネスモデルが通用する環境にはありませんが、彼女たちのように、よりフィジカルな方法で、同じビジネス展開をしているのです。
まさに、フィジカルスタートアップ。
さらに、注目したいのはタンザニアの若者たちのエネルギー。
彼らがビジネスを始めた理由は、常に「生きていくため」。
その根源的なモチベーションに、学歴、そして新しいテクノロジーが合わさって、現在の彼らのスタイルが形成されています。
日本の学生が、お金が欲しければアルバイトを探すように、タンザニアの若者は生きていくために自分で小さなビジネスを始めるのです。
まとめ
・タンザジア人の若者達は、生きていくために、自らスモールビジネスを始めていた。
・就職という選択肢が必ずしも安定しないため、起業を選ぶ若者が多い。