病気にかかりました。
生粋の都会人である潤pは、とある病に侵されていた。
最後に超高層ビル群に囲まれたのはいつだったろうか。
香港以降、カンボジア、タイ、ミャンマー、インド、オマーンと超えてきて、そこにあったのは、村、自然、仏教遺跡、河、砂漠。
もう勘弁してくれ、心の底から、あのごみごみとして忙しそうな人の波と、太陽すら隠しよる高層ビルに、強烈な懐かしさを覚える。
ビル症候群と名付けられたこの病は、長らく大都会を目撃していない潤pの身体を、確実に蝕んでいた。
もう、、、もうネイチャーとか自然とかどうでもいい、、、オレに、、、オレにビルを見せてくれぇえ、、、!!!
そう、潤pは正真正銘の都会人なのである。
そんな潤pに朗報が入った。
ドバイという場所は、中東1の大都会で、高層ビル群は、世界と一二を争うほどのものらしい。
オマーンのなーんにもないっぷりがもはや沸点に達し、泡を吹きかけていた頃、生命の危機を感じドバイへの国境超えバスチケットを買ったのは、このためである。
案の定、ドバイは大都会だった。
超高層ビル群、豪華なホテル、大規模なショッピングモールに、華麗な噴水ショー、世界一美しいと言われるスタバすらある。
しかし、なんだ、なんなんだこの違和感は。
あらゆるものがモダンで、夢にまで見た大都会が目の前にあるというのに、何故か心の深いところで、しっくりこない。
ドバイに対する感想一言。
血の通ってる心地がしない。
これまで、どんな場所に行っても、人々の生きている心地がした。
雑多さだったり、その土地が培ってきた文化と歴史だったり、
時には路上に寝転ぶホームレスを見た時に、言葉が通じなくても露天のおばちゃんが一生懸命説明してくれた時に、はたまたボッタクられてこのクソ野郎と思った時に、
あー、やっぱ人間が生きてる場所なんだなぁ
とエナジーのようなものを感じたのである。
しかしやしかし、このドバイからは全くそういった、活力のようなものが感じられない。
いや、そりゃ絶景の夜景に、美しい高層ビル、エンターテインメントの数々に、なんでも揃っている。
ただ暑くて砂漠気候の土地だから、人々があんまり外に出ていないだけかも知れないけれど、なんだか、見た目だけ超豪勢な、中身の空っぽの空間に来てしまったような気がしてしまったのである。
どうしたもんか。全く楽しくないぞ。久しぶりに。
そうして、頭の中には、愛すべき我が大都会、東京の絵図が回り始めた。
毎朝大学までの道のりを人混みをかき分けながら進んだ、池袋の地下道。
未だに迷ってしまう魔宮ラビリンス、新宿駅。
1回の青信号の通行人が3000人を越えるという、渋谷スクランブル交差点。
あぁ、我が東京。
お前は、、、何処へ、、、
ある医者は当初の誤診に気づき、言うのである。
彼は、都会が好きなんじゃなくて、東京が好きなんです。
つまりは単純に、ホームシックなんですよ。
ここに、病名が判明したのです。