潤pの、就活やめて、世界一周することにしちゃった。

2016/4/15から始まった、世界中の「働く」を探るプロジェクト! 日本の「就活」と「働く」ことに息苦しさを感じた「現役就活生」潤pが、世界の同世代と出会い、就活事情と労働環境、そのライフコースを取材、配信し、 帰国後に電子書籍化するプロジェクト。

【ホテルからすぐ、アラブ人男性が殺された】パレスチナ人の就活 - 殺すか死ぬか先の見えない若者たちのライフコース。

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ある日、イスラエルエルサレムの旧市街を散歩していると、けたたましいサイレン音が鳴り響きました。

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*ダマスカス門

何事かと騒乱の方向へ行くと、旧市街の大きな門の1つ、ダマスカス門の目の前に、大勢の群衆とイスラエル軍、救急車にパトカーが集まっている!? そして、何より目を疑ったのは、彼らが囲んでいるのは白い布が被せられた、人間の遺体だったのです。

 

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*騒乱のダマスカス門前

 

反射的に、隣にいた人に、

潤p:何があったんですか!?

男性:あぁ、、、男が、イスラエル兵に射殺されたんだ。。。

 

より詳しく事情を聴いてみると、ヨルダン人男性が刃物でイスラエルの女性兵士に襲いかかって射殺されるという。1つのテロ未遂事件だったのです。

 

騒乱の中、遺体を前に、冷静な男性の言葉。

何が一番驚きかって、この場所が、潤pの宿泊していたゲストハウスから50mほどしか離れていない、毎日のように通っていた場所だったからなのです。

 

パレスチナ人男性の、不平等な人生。

その日、その足でパレスチナ自治区へ行く予定がありました。

しかし、この事件でバスのダイヤが大幅に乱れ、まったくバスが来ない。

どうやらダマスカス門付近が封鎖されたため、バスが入ってこれなくなったらしい。

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パレスチナ自治区行きダマスカス門前バスターミナル

 

どうしたものかあたふたしていると、1人のアラブ人男性が話しかけてきた。

 

男性:バスは来ないよ。

潤p:やっぱりですか。。。

男性:お兄さん、外国人でしょ。こんなこと、イスラエルじゃ日常茶飯事なんだ(苦笑)。数ヶ月に一回は、こんなことが起きてるよ。

 

彼は現在テルアビブで仕事をしているという、パレスチナ人の男性でした。

潤pもどうすることもできなくなってしまったので、この人としばらく会話を続けることに。

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エルサレムの街 

男性:パレスチナ人がこうやって殺されて、全ての予定が狂う。今日は久しぶりに家族に会いに帰るのに、これじゃいつ帰れるかわからないよなぁ。

潤p:これが、日常茶飯事だなんて。。。

男性:いつもあいつらは、圧倒的な力で俺らを上回ってくるんだ。こうやって、暴力で、パレスチナ人を押さえつけようとする。こんな状況、許せるものじゃないよ。

 

声が次第に荒げていき、瞳には悲しみとも憎しみとも言えない、涙のようなものが滲んでいるのがわかります。

 

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*壁で区切られるパレスチナ

 

話によると、彼は奨学金をもらってエルサレムの大学に通っていた優秀な方でした。

パレスチナ人の若者が、イスラエルで希望を抱いて将来を描いていく1つのモデルケースになるかと思い、話を更に聞いてみます。

 

潤p:パレスチナ人で、イスラエルの大学に行く人も多いんですか?

男性:少ないね。とても難しいから。それこそ、奨学金をもらえるぐらいに必死に勉強しないと、進学はできないね。

潤p:卒業後は、どんなふうに?

男性:はじめはエルサレムで就活をしたんだ。だけど、俺、パレスチナ人だろ?そんな簡単に仕事が見つかるわけもなくて、特にエルサレムは、とても保守的な場所だから。それで、もっとリベラルなテルアビブに移って仕事探しを始めたんだ。

 

イスラエル領内でのパレスチナ人の就活は、パレスチナ人であるという理由だけで圧倒的不利な状況に立たされる。

また、そもそも就労後も、差別や主義の対立により職場環境に馴染めず、苦しいキャリアは続くそう。

 

ただ、興味深い点として、ブルーカラーの仕事に関しては、むしろパレスチナ人にも働くチャンスは大いにあるらしい。

イスラエル人の嫌う仕事が、パレスチナ人に回ってくる。こうした状況が今のイスラエルにはあるようなのです。

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男性:検問は、もう知ってる?

潤p:はい、何度か通過しました。

男性:俺がエルサレムの大学に通っていた頃は、もちろんパレスチナ自治区から通っていたわけだけど、検問のせいで、2時間かけて大学にいっていたんだ(笑)。

潤p:そんなに。。。

男性:俺はヘブライ語も話せるんだけど、検問の時にヘブライ語を使うとどうしても話者のユダヤ人たちとは対等に話せないんだ。だから、検問を通る時はいつも英語を使う。これがポイントだった(笑)。

 

そうこうしているうちに、バスがやってきました。

潤pの行き先を聞くと彼は、途中までだけど!と言って、潤pに同乗して、降りる場所まで教えてくました。

 

もちろんこれは1人のパレスチナ人の若者の視点と経験から語られたストーリーではありますが、今イスラエルでは、こんなことが、当たり前に起きているのです。

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殺すか死ぬか。先の見えない若者たち。

A:エルサレムで起きていることは、基本的人権の侵害なんです。

 

そう語るのは、縁あって知り合うことができた、パレスチナ自治区のために働くNPOスタッフのAさん。

 

パレスチナ自治区で、ヨルダン川西岸地区のみならずガザ地区までも活動範囲とする、パレスチナ問題を知り尽くした方です。本プロジェクトにも関わる若者のライフコースについても、詳しくお話を伺うことができました。

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パレスチナ自治区の自警団

 

A:エルサレムエルサレムパレスチナ自治区)の学校が、イスラエルの中でも最もドロップアウト率が高いんです。何故だかわかります?

潤p:。。。??なんでですか??

A:若者たちが、将来に希望を見出せないんです。

 

そもそも、イスラエル側と、パレスチナ自治区の物価の差は歴然で、潤pが見てきた現状では5倍ほどの差がありました。

それはつまり収入面でパレスチナ人が、国内の圧倒的低所得者層であるということを意味しています。

 

また、パレスチナの大学を出ても4割の学生が就職できません。それ以外の若者は、レストラン、作業員、タクシードライバーなどの仕事に就いていくというのです。

さらに追い討ちをかけるのは、パレスチナ自治区の大学を卒業しても、イスラエルで正式に学士などの資格が認められないこと。

 

つまり、パレスチナ自治区で働こうとしても職がない、経済が不安定、そしてイスラエル側へ出ても、学歴がないことや経済格差、差別など、まず第一にパレスチナ人たちは、八方塞がりの圧倒的不利なライフコースの上に立たされています。

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パレスチナ人の子供達

 

A:最近、10~20代のパレスチナ人の若者が、ナイフを持って、イスラエル人の一般市民を殺す事件が増えています。自爆でもなく銃でもない。そんな方法に、この現状の悲しさを感じます。

 

1993年に調印されたオスロ合意(オスロ合意とは - コトバンク)をご存知でしょうか。

イスラエル側が占領したヨルダン川西岸地区とガザ地区からイスラエル軍が撤退して、パレスチナ自治政府による暫定自治を認めた合意です。

 

しかし結果は、現在もご覧の通り、平和は未だに実現していません。

オスロ合意後も、イスラエル側は壁を境界線を無視して建設し、エルサレムを併合、対抗したイスラム過激派との泥沼状態に陥っていきました。

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パレスチナ人の子供達

 

A:オスロ合意の後に生まれた世代は、和平条約の意味のなさを知っているんです。今の若者たちは、イスラエル側に裏切られたことと、パレスチナ政府への不信を、小さい頃からのまわりに溢れていた暴力で知っています。自分たちの政治的な意思を託す先がない。結果、希望を失った若者の気持ちが、暴力として現れてしまうんです。

 

パレスチナ人の1割の若者は、身体的な暴力に何かしら触れた経験があるといいます。

 

銃を持った兵士がそこらじゅうにいて、自分たちを監視している。

今まで住んでいた土地が、突然暴力で奪われていく。

テレビやメディアでは、爆撃され壊されていく自分たちの土地が映されている。

そのような環境化で育った若者たちの気持ちは、到底潤pには理解できない。

 

A:壁がまだ作られていない時は、イメージできる誰かがいたんです。隣の家の人がユダヤ人だったり、いつも行く商店の人がアラブ人だったり。イメージできる誰かがその国にいること、それが平和だと思うんです。それが壁ができたことで、お互いに知っている相手がいなくなった。今両者にあるのは、憎しみと恐怖だけなんです。

 

いつテロの襲撃をあうかわからない心境にあるというユダヤ人たちも、被害者の1人であると語るAさん。

兵役に就かなければ社会サービスを剥奪されたり、極端な兵役に帰属するコネ社会など、ユダヤ人側の苦しみについても触れていたところも印象的でした。

 

A:とても悲しいことですが、自殺は、自由がない人たちの最後の自由だと思うんです。相手を殺すか、自分で命を絶つか。

 

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パレスチナ人の子供達

 

ガザ地区でも活動するAさんは、ガザ地区の悲惨さについても語ってくれました。

A:ガザ地区は、ヨルダン川西岸地区に比べても、特にひどい状況です。将来何したいって聞かれても、何も答えられないのがガザ地区に生きる若者たちです。

 

陸の孤島ガザ地区で、完全に生きる意味を失った若者たち。

 

ガザ地区は8割の人が援助物資によって生きているといいます。

カロリーベースの援助物資のせいで、太っているのに栄養失調になっている人・子供が多く、栄養面からパレスチナの未来が潰されかかっているといいます。

 

A:今私たちの団体では、暴力以外の方法での若者の自立支援や、栄養士を育て、彼ら自ら生活レベルを向上させていく支援を行っています。支援を受け続けて暮らしてきた人たちが、自分でもやれることがあるんだと気づけた時が、人間の1つの尊厳を守る瞬間だと考えています。

潤p:あくまで、地元の人たち自らの力を引き出すのですね。

A:本来、NPOがやっている活動って、イスラエル側がやらなくてはいけないことなんです。ここで、NPOがやってしまうことで、イスラエル側の責任をなくしてしまうことにもなっているのですが。。。

 

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*分断されるイスラエル

 

イスラエルに来てからというもの、自分の旅のテーマとはなんだったんだろうと考える機会が多くなります。

 

「就活」というレールに流されて生きる自分を含めた日本の若者の現状に危機感を抱き、希望がない若者とすら断定してきた自分。

しかし、そこでいう希望とはどのレベルの希望なのか。生活が保障された上でやりたいことができるかできないかという話なのか、生きる権利を全て剥奪された上で失う希望なのか。

 

この場所は、確実にこの旅の1つの大きなハイライトに違いない。

旅はまだまだ続くのです。

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