【本当の被害者は、イスラエル人の若者だった】ユダヤ人の若者が語る、パレスチナ問題、イスラエル側の視点。
イスラエルの若者は、3年間の兵役が義務付けられています。
韓国など世界のいくつかの国にも兵役はありますが、未だテロなどが絶えない不安定なイスラエルの兵役の厳しさは、群を向いている。
トム:仲間が何人も、目の前で殺されたんだ。
極限状態で生き抜いて来たイスラエル人の若者は何を思い、人生をどう歩んでいくのか。
聞いて来ました。
爆弾処理班のトム。
*トムの家族。トムは真ん中
今回話を聞いたのは、24歳のトム。
名前:トム
年齢:24歳
職種:ロボット工学の会社のインターン
彼と出会えたのは、エルサレムのゲストハウスで出会った日本人のご紹介。
その方とトムは、タジキスタンでお互い旅行中に出会ったそう。
トム:その時は、ちょうど兵役が終わったばかりで、中央アジアを数ヶ月間旅してたんだ!
兵役後の旅。
以前の記事でも紹介した、イスラエル人若者の王道ライフコースです。
トム:僕は兵役中、爆弾処理班として働いていたんだ。エジプトとガザ地区の間に通る秘密トンネルの破壊作戦にも参加したことがあるよ。最前線で戦ったその経験は、今でもしっかり覚えてる。
爆弾処理班は、兵役で若者が従事できる部隊の中でもトップレベルのエリート部隊です。
技術職であるここに入るこということは、その後の将来にも大きなプラスに働きます。
潤p:どうして爆弾処理班に入ったの?
トム:将来工学系の仕事をしたかったんだ。だから、技術職でもエリートの、この部隊に入りたかったんだ!
潤p:なるほど。イスラエルの就職には、兵役の経験がすごく重要だって話は、いろいろ聞いてきたよ。
トム:今は、ロボット工学の会社でインターンとして働いていて、実際にロボットの設計をしてるんだ。これも、すべて爆弾処理班にいた経験があったからなんだ。
大学は、このインターンの後に入学するらしい。
大学では、もちろんロボット工学の道をさらに進んで行く。日本とは全く異なるライフコースの描き方です。
兵役と、飲み会。
*トムとその友達
トムは、彼の友人たちと飲む機会も設けてくれました。
20代前半の彼らの中には、現役の兵役従事者も数人います。
潤p:どこの部隊なの?
友人:ごめんねぇ。。。それは答えちゃいけないんだ。
お酒を飲みながらも、シリアスな影はどこかにはある。
しかし、休みの日には、皆んなこぞってバーに来て飲み明かすらしい。
これだけ陽気な会なのに、ほぼ潤pと同世代だというのに、実戦をかいくぐってきた面々だと考えると、ただただ信じられないのです。
僕らだって、命をかけて戦わなければいけないんだ。
とても気さくでありながら、真面目な強い芯も持った彼。
その本音を、問うてみます。
潤p:トムは、兵役についてどう考えてる?
トム:兵役は、僕らイスラエル人の若者が、必ずやらなければいけないことだと思ってるよ。多くの昔の人たちが命を犠牲にしてこの国を守ってきたんだ。次は僕らの番だよ。
潤p:なるほど、、、
トム:兵役はなくてはならないもので、国を守り、人を強くして、さらに将来のキャリアアップにも役立つものだと、僕は考えてる。
トムも、徐々に熱くなってきます。
潤p:実際、パレスチナ問題として取り上げられて、イスラエルが批判されることもあるよね。
トム:パレスチナ自治区側の状況も理解してる。だって、こうやって壁に囲まれて、移動するのに検問を通って、そりゃ誰だって嫌だよ。生活が苦しいのは十分わかる。でも、もし、それを全部無くしてしまったら、次はテロがやってくる。たくさんのイスラエル人が死んでしまう。どうしようもない、お互いに泥沼にはまってしまっているような感じなんだ。
パレスチナ自治区側も理解した上で、それでも兵役の必要性を訴えるイスラエル人の若者の意見は、とても貴重だと思います。
トム:パレスチナ擁護のワンサイドストーリーがあまりに世界世論で多いことに、憤りを感じてしまう。僕らだって、国を守るために命をかけて必死にやってるんだ。もし僕らが世論に従ったら、国がなくなる。イスラエルは国として、世界から認められたんだから。
熱くなった声に一呼吸をおいて、最後にこんなことをつぶやきました。
トム:実際、僕の眼の前で、何人もの仲間が殺されたんだ。いくらパレスチナ自治区の状況を知っていても、その時の憎しみや怒り、悲しみは、一生僕の心からは消えないよ。
イスラエル人の若者も、被害者の1人だった。
*豪華なトムの家のディナー
トムは家族の夕食会に招いてくれました。
とても優しいイスラエル人の大家族は、豪勢な食事を、心ゆくまで振舞ってくれたのです。
こんなに誠実なトムと、暖かい家族を眼の前に、潤pが昨日まで見ていたパレスチナ自治区の惨状をどう捉えたらいいのか、強く混乱してしまいます。
しかし、改めて、今一度自分がこれまで学んできて、ポリシーとして掲げていたものを、トムの言葉から思い出されるのです。
当たり前を疑う。
パレスチナ自治区だけがかわいそう、パレスチナ自治区だけが被害者であるという発想に、勇気を持って疑ってみる。
すると見えてくる、本当の世界。
イスラエル人たち、特にイスラエルの若者たちも、この大きな問題の被害者の1人なのです。
生まれながらにテロからの恐怖にさらされて、いつなくなるかわからない国に住み、兵役の元、隣人に憎しみと恐怖を覚えなくてはならない。
すべての人生、ライフコース、そして感情までも、国に規定されてしまう若者たち。
もしかしたら、潤pが思っているよりも、国というものを維持することは、相当に難しい。
幸いにも、海に囲まれ、戦後ずっとアメリカの下で守られてきた日本にいると、全くピンとこないものですが、どうして僕らがこうして今の日本という国で固有の文化圏と言葉で生活できているのか、それがいかに奇跡のようなことなのか。
改めて、イスラエル人の若者から学ぶことは非常に多いと思うのです。