【イスラエルを命をかけて守りたい】シオニズム活動家・19歳の若者は、どうして国家に命を投げ出せるのか。
歴史の教科書に書かれた事実は、遠いどこかの昔話として僕らには思えているかもしれません。
しかし、ここイスラエルには、想像をはるかに上回る現実が当たり前として存在しているのです。
今回は、シオニズム活動家の19歳の青年、Aくんの人生に迫ってみます。
僕、シオニストだけど、いい?
改めまして、シオニズムとは、
パレスチナのエリアに、ユダヤ人の民族国家(イスラエル)を建国することを目的とした主義と思想のことで、
この主義者はシオニストと呼ばれます。
Aくんとの出会いはオンライン。
とりあえずイスラエルに到着、
知り合いいねーどうしよ。
そうだ、SNSやな。
SNSの日本好きグループに参加してる人に手当たり次第に送りつける。会いましょう。
そして、罠にかかったのが、こちらのAくんだったのです。
会う約束を取り付けると、向こうから。
A:僕、シオニストだけど、いい?
むしろ、話を聞いてみたいと懇願。
会ってみると想像とは異なる、割とおとなしめの雰囲気を感じる青年が現れたのです。
「シオニズムツアー」から、「イスラエル料理」フムスへ。
今夜の予定は、街散歩からのディナー。
早速街を歩きながら、Aくんのツアーが始まります。
予想は的中。
案内してくれるのは、イスラエルの政治、また軍事的な施設ばかり。
街中にあるイスラエル軍施設から、巨大なシオニズムの世界本部の建物まで。
A:イスラエル人としてとても誇りに思うよ。これらの素晴らしい機関があることで、この国は守られているんだ。
*フムス
夕食は、Aくんのオススメの店だとして連れてきてくれたフムス屋さんで。
フムスとは、ヒヨコマメをすり潰してペースト状にし、ピタパンとともに食べる中東で広く食べられる料理(イスラエル人には、イスラエルの料理だとする人が多い)。
A:潤p、フムス食べたことある?
潤p:あー!食べたかったんだ!初めて!
A:イスラエルに来たら食べなくちゃね!この国の料理なんだから!
兵役にどうしても行きたかった。
*兵役に従事する若者
イスラエルの19歳とは、多くの若者が兵役に従事する年でもあります。
しかし、足にハンデを抱えるAくんは、軍隊に従事してはおらず、代わりに病院で子供達の面倒を見るという公共サービスの仕事に就いています。
旅の初め、韓国でも、兵役に行かなかった若者に出会いましたが、やはり環境は似ているのでしょうか。
Aくんとのその会話の中で、彼は心に抱える悔しさを語ってくれました。
祖父の代から軍人家系である彼は、自分1人だけが軍隊に行けなかったことに強烈なコンプレックスを抱いているといいます。
A:本当に軍隊に行きたかった。今でもその気持ちは変わらないよ。
潤p:なんでそこまで?
A:イスラエルって国は、これまで何人もの人の命の犠牲の上で作られてきた国なんだ。そして、これからも誰かが命をかけて守っていかなければいけない国なんだ。だから、昔の人が命を投げ出して国を守ってくれたように、次は、僕たち若い世代がこの国を守り抜くことは、当然の使命だと思う。
命をかけなければ保持できない国。
平和な日本にいては、到底リアルには感じられない感覚です。
彼の中の、正直な世界。
街を案内してくれて、冗談で笑って、美味しい食事も一緒に食べて。
彼はなんら普通の若者です。
しかし、ところどころ、平然と、潤pが純粋に「恐ろしい」と感じてしまうこともありました。
まず、会う前から思っていた、彼のSNSポスト。
シオニズムの内容やパレスチナ関連ポストがほとんどを占めますが、そこにはアラブ人への中傷とも取れるポストも散見できます。
彼が書く見出しには、
見よ!これがアラブ人だ!
とか、
これだからこいつらは!
というような内容が多くあることに、潤pはひいてしまうのです。
後日、潤pが撮ったパレスチナ自治区の写真を彼の活動に使いたいと言われた時は、さすがに断りましたが。
さらに、潤pにとっておきのプレゼントがあると言って渡してくれたのは、イスラエル軍パラシュート部隊の旗。
潤pのリアクションを疑わず、必ず喜んでくれるとして率直に渡してくれた彼から、イスラエルへの強い愛を感じます。
それ以外にも、アラブ人やパレスチナへの悪口も当然ながら会話の中に出てきます。
軍隊へ行けなかったというコンプレックスも、彼を強く動かしている動機のように映ります。
19歳のシオニストの、将来の夢。
そんな彼の将来の夢は、デザイナーになること。
嬉しそうに自信が描いたスケッチブックを見せてくれました。
公共サービスの仕事が満了したら、デザインのカレッジへ進学することを考えているそうです。
国と環境に、価値観が規定される若者たち。
彼をSNSで見つけることができたのは、日本好きのオンラインコミュニティに参加している1人であったから。
彼は最後にこんなことを言いました。
A:なんで僕が、このコミュニティに参加しているかわかる?
潤p:日本文化とか、好きな感じ??
A:違う。僕は、他の人みたいにアニメとかオタク文化に興味があるんじゃなくて、日本がこの先の将来、イスラエルの強い味方になると信じているからなんだ。だから、将来のイスラエルのことを考えて、日本という国を学ぼうと思ってるんだ。
この記事で、彼への間違った解釈がされることが怖いのですが、彼は本当に普通の若者です。
優しくて、面倒見が良くて、楽しくて。
ただ、そんな彼も、生まれながらの環境、おそらく家庭やメディアで見てきたものによって、価値観を強く規定されているように思います。
この生まれた環境によって価値観が作られるというプロセスは、世界中のあらゆる社会で起きることですが、イスラエルはそれがあまりに顕著で、過激であるように思えるのです。
ただ、1つ言えるのは、Aくんには、夢があります。
キャリア選択においては、主義や価値観よりも、その人の純粋なる興味が優先される。
こういったところから、シスラエルが単なる宗教や主義、理念だけによって形成される国ではなく、経済国家として成長している理由が垣間見れるとも言えるかもしれません。
ただ、それでも、19歳の若者に、ここまで言わしめたこの国は、やっぱり特殊。
そんなぁ、本気でシオニズムなんてあるの?
この国で生まれて育った、少なくとも彼という若者は、本気でアラブ人を排除してユダヤ人だけの国家イスラエルの樹立を願っています。
若者の人生とは、潤pが考えていたよりも簡単に、社会に規定されてしまうようなのです。