【10歳で人生が決まる!?】世界一見習いたいドイツの若者とは? - ドイツの教育システムから考える。
宣言できることがあります。
この旅を通して出会った若者の中で最も見習いたい若者は、ドイツ人の若者たちでした!
潤pの主観であることは前提として、世界で最も自由、それでいて堅実、そして積極的な彼らのその洗練されたマインドは、一体どのような背景から生まれるのか。
今回は1人のドイツ人の若者のライフコースから見えてきた、ドイツの教育システムと価値観に迫っていこうと思います。
名前:ドンニャ
年齢:24歳
職業:大学生
ドンニャとはもともと日本にいる時からの知り合いでした。
日本に留学に来ていた彼女と共通の知人のつながりで出会った潤pは、今回ドイツで久しぶりの再会を果たすのです。
日本とまるで違う!? ドイツの教育制度
*ドイツの総合大学の様子
今では留学も経験した大学生として生活する彼女ですが、もともとは勉強が大嫌いな子供だったと言います。
彼女の小学校からの歩みを見ることで、ドイツの教育制度が見えてきます。
ドニャ:小さい頃は勉強がすごい嫌いで(笑)中間レベルの学校に行ったんだけど、猛勉強して、一番レベルの高い学校に編入したの。
潤p:なんでわざわざ編入したの?
ドニャ:一番レベルの高い学校に入れば、大学にも行けるようになるから!もともと日本が好きで、お母さんに「大学に行けば好きな日本に行けるよ」って言われたのがきっかけで、猛勉強を始めたんだよね(笑)
ドイツの教育制度は日本のそれとはまるで違います。
以下に、簡略化していますがドイツの教育制度を図式化したものを載せます。
10歳で人生が決まる!?
義務教育の中で、ドイツの小学校を卒業した子供たちは4つの教育機関に分かれていきます。
大別すると、職人などの技術職系を学ぶ路線(①基幹学校と②実科学校)と、大学進学を目指した高等教育を学ぶ路線(③総合学校と④ギムナジウム)とに分かれることになります。
①基幹学校(Hauptschule)は、完全に実務訓練に特化した職業教育学校。将来職人を目指す子供が通う学校です。
②実科学校(Realschule)は、職業教育学校でありながら、高等教育も両立して行う学校。卒業後、ギムナジウムへの編入も可能。
③総合学校(Gesamtschule)は、技術職系を目指す路線と大学進学を目指した路線とを複合して教育し、在学中に自分の進路を決めることができる学校。
④ギムナジウム(Gymnasium)は、最高難易度に位置付けられる、大学進学を目指した高等教育機関。
*ドイツの総合大学の様子
では、一体、子供たちはどのようにして、小学校卒業と同時にこの4つの進路を選択していくのでしょう。
小学校の成績と、担任の評価。
以上!
小学校卒業の年齢は10歳。
つまり、ドイツの子供たちは、10歳でその後の将来の路線が決まってしまうのです!
特に、図を参照の通り、①基幹学校と②実科学校に行った生徒は基本、総合大学へ行くことは叶いません。
ドイツの子供たちは、10歳、またはそれより以前に自分の将来設計をしていくことが必要となるのです。
子供:将来はビジネスマンになりたい! そうだ、そうすると、総合大学に行く必要があるぞ。なら、ギムナジオムに入らなくちゃいけないから、小学校の成績を良くしよう!
とか、
先生:この子は勉強が嫌いなので、基幹学校で職人の道を目指した方がいいでしょう。
というようになるのです。
しかし、救済措置もしっかりあるのがドイツの教育システムの特徴。
ドンニャの場合、実科学校に進学したのですが、6年生の時にギムナジウムに編入したのがその例です。(猛勉強必須!)
また、あまりに早すぎるライフコース決定への対処から生まれたのが③総合学校。
6~8年をかけて、子供がやりたいことを自ら見つけることができる環境が作られています。
ただ、総合学校への入学は抽選形式で、倍率が非常に高いと。
*ドイツの総合大学の敷地内にある学生バー
高等教育へ!
以上4つの教育機関を卒業すると、新たなステップに進みます。
*もちろん就職する人もいます。
①基幹学校と②実科学校の生徒の多くは、全日制または定時制の職業訓練コース(Ausbildung)へ進むことになります。
このAusbildung制度がまさしくドイツ独自のもので、週に1~2日は学校で座学、それ以外は企業や工場で実地研修をするというシステム。
それを卒業すると、就職する人も多いですが、自分が学んできた分野の大学、さらに大学院へと進学が可能です。
さらに、それとは別に、その分野の専門家である資格をとるために、高等職業訓練コースに入り、マイスターの資格を取ることもできます。
③総合学校と④ギムナジウムを卒業した生徒でさらに進学を希望する者は、共通試験であるアビトゥーアを受講する資格が得られ、それをパスできれば大学に進みます。
ちなみに、ここまで受験というものはいっさいなし。
すべて、成績や抽選で決まります。
さらに最後に、これらの教育全てが、無料なのです!
ドンニャのライフコース。
*大学のシェアルームメイトとドンニャ
ドンニャはその後、どのようなライフコースを描いてきたのか。
ギムナジウム卒業後、英語の勉強のためアイルランドで約1年生活しました。
ドニャ:英語を上達させたかったし、異文化で生活してみたかったから、アイルランドに行ったの。
ドイツ人には、大学進学前に海外へ渡ったり、自分の経験を高める経験を積む若者がとても多い。
彼女は、大学進学後、日本語学と宗教学を学び、日本の大学にも留学しました。
大学在学中も、休学や留学はとても一般的だといいます。
ドイツの就活からわかる、ドイツと日本、「働く」システムの違い。
ドイツの就活は、どのようになっているのでしょう。
ドニャ:ドイツの就活で一番大事なのは、経験。だから学生はインターンなんかで経験を無理矢理にも積まなければならないの。高校では必ず3週間のインターンをすることにもなってるし。
ドイツの教育システムを見ても、日本のそれとは大きく異なります。
その違いが生まれる理由こそ、就活の場で顕著に表れています。
日本では、基本的に「働く人」の教育は、企業に入ってからという前提があります。
そのため、真っ白な状態の新卒が好まれ、入社後に「働く」教育がなされていきます。
大学は、あくまで教育機関としての役割しかないのです。
一方ドイツでは、そもそも企業が、即戦力になる人材を求めているので、学生たちは大学で自分の専門性を高めたり、インターンなどで経験を積んだりする必要があり、教育機関の位置付けが異なります。
教育機関の中に職業訓練を目的とした学校が存在しているぐらいなのです。
10歳という年齢から自分の将来を何度となく考える機会があったり、休学して人生を見つめ直す機会を必要とするのもうなずけます。
ちなみに、教育現場でも、
日本では、答えのある暗記ものが中心で、絶対的に正しい先生から、未熟者の生徒へという構図が基本ですが、
ドイツでは、それぞれの答えが尊重され、重要なのはその答えに至った思考過程であるという思想のもと教育プログラムが進められていくので、子供達の意思決定能力がより養われていくということもあるようです。
両国では、そもそもの「働く」システムが異なるのです。
とても自由なドンニャの人生。
潤p:ドンニャは、これからどんな人生設計をしているの?
ドニャ:まず日本でボランティアをして働こうと思ってる。それでもし生活が苦しそうだったら、ドイツに戻ってマスターを取るかな。
この発言こそ、ドイツ人らしい発想から生まれるものだと強く思います。
決して大金持ちの家に生まれたわけではない彼女ですが、マスター取得も無料であるというドイツの制度の中で、自由にライフコースを描いている。
そしてそれは、社会の何かに流されるわけでなく、経験から裏付けられた自ら選んだライフコースなのです。
正直、こう思えるのってすごい羨ましい。
ドニャ:ドイツでは、日本みたいに決まった就職の時期ってなくて、仕事はやりたくなったらやるっていうような感じなんだよね。
ドイツのライフコースの幅は、ものすごく広い。